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なぜ臭いが消えるのか?


ニオイの原因について

ここでは悪臭を取り上げますが、その原因となっているものは、アセトアルデヒドのような揮発性あるいは不飽和脂肪酸などの難揮発性有機化合物そしてアンモニアのような無機系の化合物などです。孤立電子対 (非共有電子対) を分子内に持つような化合物は、かなり不快な臭いがします。例えば、ピリジン、ピリミジン、トリメチルアミン等がこの範疇に入ります。この場合は、これら分子中の窒素原子が不対電子を持っています。その他チオール系の硫黄化合物やホスフィン等の有機リン化合物が知られています。 脂肪酸などでは、分子内に二重結合を持った不飽和脂肪酸などが不快な臭いを発します。その他の有機化合物では、ペンタン酸 (吉草酸) も足の裏の臭いのような不快なに臭いがしますが、分子構造が異なる 3-メチルブタン酸 (イソ吉草酸) は足の裏の臭いの原因物質でもあり、ペンタン酸と比べて臭気の閾値が非常に低いため悪臭防止法の規制物質に指定されています。臭いと化学物質の分子構造とは深い関係があるようですが、逆に考えれば我々が爽快と感じる臭いも犬や猫などのペットの立場からすれば「不快な臭い」かも知れません。 では、「人が不快と感じる臭いの取り除き方」について考えてみましょう。



換気以外で、臭いをなくすにはどうしたらいいの?

密閉空間から臭いを取り除く方法は三つ考えられます。

  1. 臭いの原因物質を分解する方法
  2. 化学反応によって臭いの原因物質を、無臭あるいは芳香の化学物質に変化させる方法
  3. 吸着作用により、臭いの原因物質を隔離する方法

ではこれらの消臭方法について考えてみましょう。



1) バラバラに分解する方法(根絶やし!)

これには、光触媒や酸化剤などの化学物質が利用されています。 光触媒にせよ次亜塩素酸により、臭いの原因物質となっている化合物を「二酸化炭素」・「水」・「窒素ガス」等に分解してしまいます。


2) 化学反応により臭気物質を他の物質に変換

例えば代表的な例を挙げれば「エステル化」です。この方法はカルボン酸系の悪臭を放つ有機化合物に有効です。 例えば、イソ吉草酸は足の裏の臭いです。しかし、エチルアルコールと反応させてイソ吉草酸エチルに換えれば、 リンゴに似た果実の香りがするようになります。ただし、多くの有機化学の合成反応が化学平衡を伴う反応であるようにエステル反応も同じです。 従って、この反応も 100 % 進むものではありません。


3) 吸着してしまう方法 (監獄行き!)

吸着剤によって臭いの原因物質を封じ込める方法です。吸着には「化学反応を伴う非可逆吸着」と「分子間力による可逆吸着 (物理吸着)」に分けられています。 厳密に言えば、前者は純然たる「化学反応」であるため吸着と言うべきではないかも知れませんね。 ただし、化学反応には、平衡反応つまり同時に逆方向の反応が起こるものも多く、化学結合の強さによっては「非可逆吸着」 と 「可逆吸着」の二つが起り得ます。 ところで前者の吸着現象は化学反応ですから、物理吸着に比べるとどうしても吸着速度は遅くなります。



室内から速やかに臭いを無くするにはどうするの?

消臭用の塗料には、光触媒を含むものと吸着剤を含むも二種類のタイプがあり、多数のメーカから販売されています。吸着のお話の中に出てきましたが、化学反応を伴うような消臭法では、人が臭いを感じなくなるためにはどうしても時間がかかります。そうなりますと「光触媒」だけでは速やかな消臭は困難であることはお分かり頂けるでしょう。そこで、吸着による消臭法が選択されるわけです。 ただし、次亜塩素酸塩含有の水溶液をふりかけて消臭する方法 (酸化還元反応) であれば速やかな消臭効果が得られるでしょう。しかし、この溶液を部屋全体に噴霧するなどやるべきではありませんし、消臭効果の持続性も期待できません。




空気清浄塗料「楽エコシリーズ」!

空気清浄塗料「楽エコシリーズは、「ゼオライトや「珪藻土類」の無機化合物を主成分としており、 その他にも消臭効果を高めるための各種添加物が含まれています。 本商品がどのような原理で消臭しているかご興味のある方は「吸着現象」の項をお読みください。

吸着現象について


吸着現象は、主に結晶の表面で起こる界面現象です。この種の現象解明のため現在も研究されていますが、未だに 「吸着現象については、概ね判ることはすべて解明された!後は判らないことしか残ってない」というのが業界内での常識となっています。 この言葉が意味することは、「様々な分光学的なアプローチは行ったがもはやこれ以上の事は何も判らない」と言うことかも知れません。従って吸着剤に揮発性有機化合物が吸着されるメカニズムについては、正直なところ現在でもあまり判っていないのです。我々の身近に存在する吸着剤には活性炭の他にゼオライトや珪藻土があります。これら吸着剤を構成している結晶表面 (原子あるいは原子団) と臭いの分子との間で、お互いが引き合っているのではと考えたくなりますね。では現在知られている原子あるいは分子間に働く力について考えてみましょう。 それらの力を分類すれば、大きく分けると「静電的な力」と「分子間力」に分けることができます。それぞれゆかりのある人名でよばれることもあります。分子間力も広い意味では静電的な力と言っても誤りではありませんが、前者と比較して極めて弱い静電的な作用と言えます。 その他にも、「水素結合」が考えられます。ただし、この種の結合は「分子間力」と比べて結合のエネルギー幅が大きく、一般には 20~25 kJ mol-1 程度が上限ですが、静電的な力や分子間力と異なり、距離は近くても「結合角」によっては、その作用がほとんど働かないという特徴があります。 吸着についてより詳しく知りたい方は、 Viktor Gutmann 著 大滝 仁志 岡田 勲 訳 学会出版センター 「ドナーとアクセプター」 第 5 章「界面現象」をご覧ください (ISBN 4-7622-6361-3)。現在でもこの学説の支持者は多く、研究者のための専門書としてだけでなく、分子化学専攻の学生の教科書としても利用されています。



吸着剤に吸着された吸着質 (VOC 等) の再放散について


吸着には「可逆的なもの と「非可逆的なもの」とに分類されています。あるいは「物理吸着」と「化学吸着」の二種類に分類される場合もあります。 物理吸着は弱い分子間力が吸着力の原因と考えられており、吸着剤と吸着質との間の結合エネルギーは、吸着質の蒸発熱と同程度で通常 20 kJ mol-1 程度です。ところが化学吸着はそれよりは強い結合エネルギーで吸着されており、大きい吸着熱と、通常 60~80 kJ mol-1 程度の活性化エネルギーを持つことが特徴となっています。 吸着の研究には、赤外分光法は用いられてきましたが、どちらの吸着でも程度の差こそあれ吸着質 (VOC が対象となることが多いのだが) に同じような構造変化 (ここでは結合長の変化や官能基の束縛など) が起っていることが判っています。この結果から、物理吸着と化学吸着との境界線は曖昧なものであることが判ります。従って物理吸着と化学吸着とを明確に区別することは適当ではないと言えます。 例えばケイ酸塩表面に存在する「遊離のシラノール基」の水素原子は酸性であるため、容易に塩基性物質であるアンモニアやトリメチルアミンと反応します。この二つは水溶液中で強い塩基性を示すことからも、塩基性であることが伺えます。従って、室内環境 (温度・気圧等) が変化したとしても、吸着された VOC は必ずしも再放散されるとは限りません。 我々は VOC 低減化のため吸着方式を取っていますが、様々な添加剤を併用することで再放散の問題に対処しています。

参考文献
Viktor Gutmann 著 大滝 仁志 岡田 勲 訳 学会出版センター 「ドナーとアクセプター」 第 5 章「界面現象」



ゼオライトによる
吸着にはどんな力が
はたらいているの?


ゼオライトは臭いや水分を閉じ込めてしまうということは皆さんご存知ですね。先ずは、高校の化学で習う化合物のお話から始めましょう。 ゼオライトはシリカ系の化合物 (SiO2) ですが、ケイ素 (Si) の骨格の一部がアルミニウム (Al) に置き換わっています。平たく言えば、ゼオライトは SiO2 (二酸化ケイ素) と Al2O3 (酸化アルミニウム) とが一緒になったものと考えることができます。このような酸化物について、少し詳しいお話を致しましょう。 Si 原子には結合するための腕が 4 本 (4 価の陽イオン) あります。ところが Al 原子には同じような腕が 3 本 (3 価の陽イオン) しかありません。この状態で、 Si 原子の骨格内に Al 原子が上手く入り込むためには、結合するための腕が 1 本足りません。この足りない腕を補うのが電子と考えたらどうでしょうが。この結果、Si 骨格内に取り込まれた Al 原子は負に帯電します (これを負電荷あるいはマイナスの電荷を持つと表現します)。 次も高校の化学でおなじみの分子のお話になります。分子内に「窒素, 酸素, フッ素など」の原子を持つ「共有結合性の強い化合物 たとえば水,アルコール類,フェノール類,アンモニア,アミン類,ヨードホルム,クロロベンゼンなど、これらの化合物は、分子内において正負の電荷の偏りが生じるため極性を持ちます。この電荷の偏りのことを双極子モーメントあるいはダイポールモーメントと言います (図 1 参照)。このような化合物は、正あるいは負に帯電している電荷 (あるいは点電荷) との間では、比較的強い相互作用 (ファン・デル・ワールス力と比較して!) が働きます。ゼオライトでは、その骨格内に存在している Al 原子が「負のイオン」と同じような役割をはたしているのです。


なんで多孔質物質や
層状化合物は
臭いを吸着するの?


ゼオライトのように、骨格内に「電荷」を持った物質でなくとも吸着することがあります。この場合は、ゼオライトほど強くはないでしょうが、吸着される分子と吸着面 (原子または原子団) あるいはその表面に既に吸着されている分子との間に弱い力が働きます。この種の弱い相互作用は「ファン・デル・ワールス力」と呼ばれており、高校の化学で習っていると思います。この弱い力は、さらに「ケーソムの力」「デバイの力」「ロンドンの分散力 (ロンドン-ファン・デル・ワールス力とも)」の三つの力に分類されています。“分子内に双極子モーメントを持たないのになんで吸着されるの?”という疑問に答えるためには、吸着面や分子間に働く「ファン・デル・ワールス力」を考えなければなりません。

分子間力とは?


分子同士が近づけば二つの分子の間には様々な力が働きます。例えば塩化ナトリウムなどの電\b0解質は水中では正、負のイオンが水和することでより安定化し完全解離すると考えられる。しかし水和(溶媒和)が塩化ナトリウムのように強くなければ正,負のイオン同士が静電的な力によってお互いが引きあう。正負の電荷が大きい場合や誘電率の低い溶媒中では、イオン対(イオン会合)ができやすいと考えられる。この様な相互作用のことを「静電的相互作用」あるいは「クーロン力」と呼ばれている。 この様な分子間相互作用は、真空中や大気中でも上述と同様の現象が起こる。ただし室内で発生したニオイ分子の吸着では、この種の相互作用ではなく、後述のイオン(点電荷)と極性分子間の静電的相互作用やファン・デル・ワールス力と深い関係がある。現在知られている分子間に働く力を分類すれば、以下のように分類することができる。

> 分子間力について詳しく知りたい方はこちらの資料をご覧下さい。

1. ケーソムの力 (極性分子間に働く力)

これは、二つの極性分子間に働く力のことです。首尾よく一つの極性分子が吸着面にくっついた場合を考えます (その理由はロンドンの分散力を参照)。さらにもう一つの極性分子がその付近に近づいたときに働く力だと考えてください。二つ以上の極性分子間が持つ双極子モーメント間に引き合う力が生じるのです。これで先ずは二つの極性分子は囚われの身となりました。




2. デバイの力 (無極性分子と極性分子間に働く力)

無極性分子が極性分子に近づくと、無極性分子が一時的に分極して双極子のようにふるまう現象が知られています。つまり、吸着表面に極性分子が捕らえられた場合、その付近に無極性分子が近づけば引き寄せられることになるのです。ただしこの種の力はクーロン力に比べたら極めて弱い力です。 ではベンゼンのような無極性分子が、ゼオライト骨格中の Al 原子 (点電荷と見なす) に接近したときはどうなるでしょう。同じような力がはたらくのではないかと考えたくなりますね。このような場合は、「誘起効果」と呼ばれる現象が起こります。この場合ベンゼンと Al 原子間には「デバイの力 がはたらきますが、おそらくこの場合は「デバイの力」よりも強い力が働くと予想されます。 でも「ベンゼン」君は脱獄も名人ですからなかなかつかまりません。




3. ロンドンの分散力 (ロンドン-ファン・デル・ワールス力)

ゼオライトや珪藻土でもわずかながら無極性分子を吸着してしまいます。“無極性分子は他の分子や吸着面と相互作用を持たないのになぜ?”という疑問が生じますね。実のところ無極性分子と呼ばれるものは意外と少なく、メタン, エタン, エチレン, アセチレンなどの炭化水素やベンゼン, ナフタレンなどの芳香族化合物あるいは、分子内に極性を持つが二硫化炭素, 四塩化炭素, 1,4-ジクロロベンゼンのような対称性の高い分子などが知られています。  無極性分子の平均電場はゼロであっても、各瞬間に電子と正に帯電した核とが双極子のようにふるまうので、無極性分子間にもデバイの式に類似した力が働くと考えられています。この観点から 1923 年に二つの水素原子間に働く力を量子力学的に計算されました。この二つの無極性分子間に働く力のことを「ロンドンの分散力 あるいはロンドン-ファン・デル・ワールス力と呼ばれています。
いずれにせよ「ファン・デル・ワールス力」は、二点間距離の 6 乗に反比例しますから静電的な相互作用と比べて、かなり弱い相互作用であることが判りますね。


水素結合と吸着現象には
関係があるの?


ニオイの吸着について、「静電的な力」と「ファン・デル・ワールス力」の二つの力で説明しましたが、ゼオライト中にはたくさんの水分子が含まれています。また、シリカ系の化合物であるゼオライトは、その表面に水酸基が残っていると考えなくてはなりません。そうである以上、それらとニオイの分子との間で水素結合が発生します。  捕らえることの難しいベンゼン分子ですが、ケイ酸塩化合物表面に存在する遊離のシラノール基の水素原子とベンゼンの 電子との間には相互作用が働きます。これによりケイ酸塩表面にはベンゼンが吸着されることになります。このような相互作用も水素結合と見なすことができます。 水素結合は、高校の化学で学習していますが、今世紀になって「国際純正・応用化学連合 (IUPAC)」によって、水素結合の定義が見直されました。今後新たな研究成果が発表されれば、現在の約束事はまた見直されることになるでしょう。そうなれば、吸着のメカニズムの解釈もまた変わることになるかも知れませんね。